ヒトニグサ
ヒトニグサ
芋ニ似テ 大キナル
根茎ヲ 有シ シバシバ
五又ニ 分レテ 小児ホドノ
大キサニナル
山中ニ自生ス
マレ二 大人ホドノ丈ニ
成長シ 手ヲ振リテ
村民ヲ招クト云フ
ソノ姿 人ニ似タルヲ
以テ 人似草ト云ヒ
村民ラ 気味悪ガリ
見ツケ 取リテモ
食フ事ナシ
- 文献「民間伝説中に顕われたる怪異植物に就いて」
「妖魅本草録」にみえたる
ヒトニグサなる植物は
その存在 疑わしき…余は 過日 水引村を
訪れし折 この
植物につきたる伝聞を
いかさま 得られしも
その実物を 見知る者
ひとりもなきなり思ふに 山芋の類の
幾又にも 分かれたるを
見て その姿 たまたま
人に似たれば
ヒトニグサと呼んだ
ものなるべし…
- 文献「水引村聞き書き」
水引村の年寄の話には 山中に
人似草なる植物ありといふ
茸を採りに行く者 山中に
手を挙げて 招く者 ありと見て
近寄れば 人の姿したる植物なり
気味悪くなりて 逃げ帰りしとかまた云ふ
この草 大きくなると
地中より 自ら抜け出し
この根をもちて 歩きまはり
田畑に入りて 養分を盗むとまた 多分の滋養を 要する故
動物の死骸などに
根づくと云ふ…
- メモ:かつて妻を殺した男が妻の影に恐怖する話と、稗田が「ヒトニグサ」を調査する話が絡み合いながら進行していくプロット。