海竜祭の夜
青海(あおみ)の原の
底深き海神(わだつみ)の
宮におはします
君に 鰭(はた)の広物(ひろもの)
鰭(はた)の狭物(さもの)を
進る(たてまつる)事を
申し賜はく…
…しかれども
打ち物なく
五(いつくさ)の兵(つわもの)揃はず
今 しばらくの
御猶予を
たまはりて
…来年の今月今日
この時 この所に
急に 集い奉って
命を
うけたまはらんと
思へば…今日の日は
青海原の
底へ 帰り
忌(いは)い静まり
給へ…
- 「あんとく様」=「安徳天皇」
- 「あんとく様の先触れ」=深海魚が打ち上げられたことと思われる。
- 「宝剣も先にお返し申し…」=彦ジィが海に投げ入れたものがキラリと光るシーンがある。
- メモ:安徳天皇の命日の旧暦3月24日になると、天皇の霊が海竜となって加美島を襲っていた。そこで阿加摩神社の神主は、あんとく様に海に引き返してもらうよう、鎮魂祭を行い、鳥居を配置し、祝詞をあげていた。
- 自然現象的には地下変動による津波と解釈される。
- 「加美島」は文字通り「神」に支配された島のことを指していると推測。
- 「阿加摩神社」は安徳天皇を祀る「赤間神宮」(山口県下関市)が由来と推測。
- 彦ジィが海に投げ入れた宝剣は三種の神器の「天叢雲剣」と推測。
- 冷静に考えると、加美島の島民全員が彦ジィの自殺願望に付き合わされた感がある。このあたりの理由は特に語られないが、彦ジィは息子の勝吉を失い、人生に希望を持てなくなっていたから、というところか。