Bunji Square Memo

メモの保存用。

海竜祭の夜

  • タイトル=「海竜祭の夜」
  • 初出=ヤングジャンプ 1982/2/18 号
  • 地名「加美島」
  • 文献「平家物語
  • 地名「阿加摩神社」
  • 祭礼「海竜祭」:旧暦3月24日。
  • 阿加摩神社の神主の祝詞

青海(あおみ)の原の
底深き海神(わだつみ)の
宮におはします
君に 鰭(はた)の広物(ひろもの)
鰭(はた)の狭物(さもの)を
進る(たてまつる)事を
申し賜はく…
…しかれども
打ち物なく
五(いつくさ)の兵(つわもの)揃はず
今 しばらくの
御猶予を
たまはりて

来年の今月今日
この時 この所に
急に 集い奉って
命を
うけたまはらんと
思へば…

今日の日は
青海原の
底へ 帰り
忌(いは)い静まり
給へ…

 


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  • 「あんとく様の先触れ」=深海魚が打ち上げられたことと思われる。

 
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  • 「宝剣も先にお返し申し…」=彦ジィが海に投げ入れたものがキラリと光るシーンがある。

 
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  • メモ:安徳天皇の命日の旧暦3月24日になると、天皇の霊が海竜となって加美島を襲っていた。そこで阿加摩神社の神主は、あんとく様に海に引き返してもらうよう、鎮魂祭を行い、鳥居を配置し、祝詞をあげていた。
  • 自然現象的には地下変動による津波と解釈される。
  • 「加美島」は文字通り「神」に支配された島のことを指していると推測。
  • 「阿加摩神社」は安徳天皇を祀る「赤間神宮」(山口県下関市)が由来と推測。
  • 彦ジィが海に投げ入れた宝剣は三種の神器の「天叢雲剣」と推測。
  •  冷静に考えると、加美島の島民全員が彦ジィの自殺願望に付き合わされた感がある。このあたりの理由は特に語られないが、彦ジィは息子の勝吉を失い、人生に希望を持てなくなっていたから、というところか。

 

  • 市川崑の横溝映画のような雰囲気。
  • 彦ジィの琵琶法師のカットバックが、ジワジワと物語を盛り上げるいい効果を出している。
  • 冒頭から平家物語と琵琶の音からはじまり、物語はよどみなく一気にクライマックスへと進む。
  • 諸星先生の画力と構想力がいい具合に相互作用していると思う。

上野の美術館へ

ブリューゲルバベルの塔


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  • 東京都美術館
  • 大人1600円
  • チケット購入後、40分待ち。
  • 待ち時間を聞いて一瞬帰ろうかと思ったが、来週で東京での展示が終わってしまうので仕方なく行列に並ぶ。
  • ヒエロニムス・ボスの作品も展示されていた。
  • ボス作品もブリューゲル作品も細密で相当に近づかないと、鑑賞できない。
  • バベルの塔の現物よりも、三倍に拡大した複製画の方が色々細部を確認できて面白かった。現物の展示の仕方が実に残念。
  • 大友克洋による、バベルの塔の内部の再現図あり。

 

松方コレクション

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  •  国立西洋美術館の常設展示が無料だった。
  • ここは以下の二つの作品がお気に入り。
  • カペの自画像

作品詳細|18世紀|作品紹介|国立西洋美術館

  • 悲しみの聖母

作品詳細|17世紀|作品紹介|国立西洋美術館

  •  ところが、貸出中とのこと。残念。
  • 次回から、0357778600 に電話して、展示状況を確認しよう。

生命の木

  • タイトル=「生命の木」
  • 初出=少年ジャンプ 1976年8月増刊号
  • 文献「世界開始の科のお伝え」(せかいかいしのとがのおつたえ)

そもそもでうすと敬い奉るは
天地の御主 人間万物の御親にてましますなり
はじめに 天地万物を つくらせたまい
また 土より五体をつくりて人となし
これ あだんとじゅすへるのふたりなり
ぱらいそに二本の天の木あれば かならず
食うことなかれと でうすかたく仰せあるを
じゅすへる あだんをたばかりて
あだんは まさんの木の実をとりて
じゅすへるはいのちの木の実を食しける
これより たちまち天の快楽をうしない
あだん その妻えわと下界に追いやられ
畜生を食し 田畑を耕してまいるべし
また じゅすへるの子ども 死ぬことなく
生みふえれば でうす こを憂いたまいて
地をひらきて いんへるのに落としたもう
その子孫 わずかに人からかくれ住み
いのちの木の実の功力にや 死ぬこと
なしといえども でうすの呪い受けたれば
順次に いんへるのにひきこまれ
子し孫そん 地の底に身をもがき
きりんと参る日まで 苦しみつきざるというなり

  •  地名「軽張山」(別名「骨山」)≒「カルヴァリオ」(「しゃれこうべ」)
  • 文献「天地始之事」(てんちはじまりのこと)
  • 「重太」(じゅうた)≒「Judas Iscariot」(「イスカリオテのユダ」)
  • 「善次」(ぜんず)≒「Jesus」(「イエス」)
  • 「三じゅわん」≒「聖ヨハネ」(三人のヨハネ=「洗礼者ヨハネ」「使徒ヨハネ」「福音記者ヨハネ」)
  • 「あだん」=「Adam」
  • 「じゅすへる」=「Lucifer」
  • 「まさん」=「Maca」(「林檎」)
  • 「えわ」=「Eva」
  • 「いんへるの」=「Inferno」(「地獄」)
  • 「きりんと」=「Christ」(「救世主」)
  • 「ぽろへしゃす」≒「profecia」(「預言」)
  • 「けるびん」≒「Cherubim」(「智天使ケルビム」)
  • 「ぐろうりや」≒「gloria」(「栄光」)
  • メモ:知恵の木の実を食べたアダム=我々人類の祖先。でも生命の木の実を食べなかったので不死ではない。生命の木の実を食べたルシファー。でも知恵の木の実を食べなかったので知恵が低い。
  • もちろん、生命の木の実と知恵の木の実の両方を食べたら、それは神の存在であると。そして、そのルシファーの子孫にもきっと救世主がいるはずだという発想が奇抜すぎて面白い。
  • そして本作でも「世界開始の科のお伝え」なんていう古文書のそれっぽさが異彩を放っている。

死人帰り

  • タイトル=「死人帰り」
  • 初出=少年ジャンプ 1974/9/23, 1974/9/30, 1974/10/7
  • 原題=「帰ってきた死人」
  • 儀式「反魂の術」「死人帰り」
  • 文献「撰集抄」(西行の説話集)

西行高野山にいた時

ひとりで修行する

寂しさ 人恋しさから

昔聞いた 反魂の術を

使って 白骨から

人間を作ったという

しかし…その人間は

人の心もなく

人間らしさもなかった

  • 死人のセリフ

偉大ナル神 原子混沌ノ神ヨ…

ヒルコノ父 スベテノ生命

疑似生命ノ父ヨ…

グルル~ン

  •  稗田のセリフ

人間に遺伝されている

地球上 最初の

原始生命の

古い記憶が…

地球の誕生と

ともに存在した

巨大な超生命体だ!

日本では

アメノミナカヌシ…

聖書ではエホバ!

ニュージーランドのイオ

ポリネシアのタナロマなど

あらゆる国の神話で

世界最初の神と

伝えられている…

この超生命体が

まだ地球上が混沌と

していた時に

最初の原始生命と

妖怪と呼ばれている

疑似生命の

先祖を生んだのだ!

  •  メモ:反魂の術で死者を蘇らせたら、異生物がとりついてしまった、というプロット。「黒い探究者」と同じく人類発生以前の超生命体が人類からは神とみなされている、という考え方。ラブクラフトの影響と確信してよさそう。
  • 少年ジャンプでの妖怪ハンターの連載は本作で完了となった。
  • 次は 1976年の「生命の木」まで待たねばならない。

赤い唇

  • タイトル:「赤い唇」
  • 初出:少年ジャンプ 1974/9/16
  • 原題:「赤いくちびる」
  • 文献「朱唇観世音縁起」(しゅしんかんぜおんえんぎ)

武蔵国の守の御娘 野遊びしたまふ折

いみじき(おそろしい)鬼あらはれいで

供の者ども ことごとに 喰らはれしが

御娘のみ やうやうにして たち帰りたまひぬ。

この姫 美しくも清げなるを

別人のごとくなりたまひて いと悪しき振舞ひし

その赤きくちびるにて よく人をまどはす。

「いみじき鬼のとりつきて鬼女となるべし」

と 人の口のはにのぼりけり。

父の守 怪しく思ひて 夜になりて うかがへば

姫 小さき童(わらわ)を とりて喰らひき。

…されば 当山に行脚の高僧おはして

魔性退散を祈りて 夜になりて

ひとり この姫見張りたまふ。

姫 鬼女となりて上人を喰らはんとすれど

上人一心に念じて つひに

姫に とりつきたる魔性

ありがたき観音像に封じ込めたまひぬ。

されど 御身も失せたまへば

その右腕をとりて 観音にぬりこめ

その霊験をもちて 魔性の封印となす。

これを 朱唇観音と名づけて 供養し

当山に伝えおくものなり。

 


 

  • メモ︰歴史的に封印されていた鬼がひょんなことで開放され現代の世で悪さをする。似たプロットの作品があったかも。本作が長編でもう少しページがあったなら、鬼を封印する方法を探すプロットも色々と盛れて面白くなると思う。
  • 作中に出てくる「朱唇観世音縁起」の古文書風の文がいかにもそれらしくていい。他の作品でも見られる、諸星先生の芸風の一つ。
  • その他のみどころは、地味な女の子が鬼に取り憑かれて、魔性の女になるところ。ジャンプ掲載時はこの魔性の女が不細工だつたが、コミック版ではかなりの美人に書き換わっている。

太平記

 

  • 私はずばり、「楠木正成」押しである。旗印は「菊水」で!

黒い探究者

  • タイトル=「黒い探究者」
  • 初出=少年ジャンプ 1974/9/9
  • 原題=「異端の研究者」
  • 「異端の研究者」「黒い探究者」=「稗田礼二郎」を指す
  • 文献「古墳の呪的文様」:

古墳は王の墓であったとともに古代の祭儀の場所あるいは悪霊を鎮めた所だ…

だから、古墳の石室は単なる墓ではなくはっきり別の目的で作られたはずだ…

ここまではまだよかった

また、装飾古墳の石室の文様をこの悪霊をしずめるための呪文だと断じてもまちがいではない

だがこの文様を独自の解釈で解読し…

さらに日本各地に残っている妖怪伝説と結びつけるに到っては…

マスコミの受けを狙っている胡乱な学者とみなされてもやむを得んか…

  • 八部家(やべけ)の本棚

 

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  • 史跡「比留子古墳」
  • 地名「不毛が原」︰八部家のあるくぼ地
  • 文献「筑後の国風土記」︰

日良の郷(ひらのさと)に土蜘蛛あり

住人 比留子とよぶ…

「日良の郷」=「黄泉津比良坂」か?

  • 文献「大友家覚書」

文永年間 地中より

比留子 無数にいでて 住人

おおくをくらう 地頭 八部某

三角(みづぬ)の冠をもて

これをしずむ

  • 八部の調査。「古事記」の神代記は一種の呪術書でヒルコを封じ込めまた呼び出す呪文が巧妙に隠蔽されている。
  • ヒルコに関する稗田の仮説。ヒルコ=地球に最初に生まれた不完全な生命体。あるいは疑似生命体。古代人に封じ込められた。その痕跡が古事記に残っていた。
  • その他︰ヒルコに追われて逃げるシーンに、イザナギノミコトが黄泉の国から逃げて黄泉醜女に追われる古事記の一節を重ねている。
  • メモ︰人類の誕生以前に存在していた生命体がいた、というプロットはラブクラフトから着想を得たのかも。

 

諸星大二郎」の読みは「もろほしだいじろう」

  • 「もろぼしだいじろう」ではありません。